泌尿器がんとは
泌尿器がんは、泌尿器科領域で診察するがんの総称です。
泌尿器科では、腎癌、尿路上皮癌(腎盂癌、尿管癌、膀胱癌)、前立腺癌、精巣癌などを診ます。
がんの治療には、患者さんの状態やがんの種類に応じた標準治療を行います。がんの進行の程度や身体の状態から治療法を検討し、それぞれ患者さんにとって最適な治療を提供することが重要です。当院では、近隣の病院と提携し、クリニックとして可能な診断、治療を行います。クリニックでできることとその限界を認識し、適切に病院と連携することがクリニックの使命と考えますので、安心して受診いただければ幸いです。
前立腺がん
前立腺がんとは
前立腺は膀胱と尿道の間にある男性にしかない臓器で、胡桃くらいの大きさです。前立腺がんは、前立腺に発生する癌で、50歳以上になると徐々に増えてきます。
前立腺の外腺から発生することが多く、発生には男性ホルモンが関与しています。
前立腺がんは2019年には日本人男性のがんの中で最も多く発症する癌となりました。
年間1万人以上の方が前立腺がんで亡くなっておりますが、早期に発見し治療を行うことで、根治を期待できます。
前立腺がんは初期にはほとんど症状がなく、症状が進行すると残尿感、排尿困難感、尿閉などが出現するため、前立腺肥大症との区別が大切になります。
PSA検査で早期に発見
PSAとは前立腺特異抗原のことで、がんや炎症により前立腺組織が壊れると血中に流れ増加するタンパク質の一種です。PSAは採血で測定し、基準値は4.0 ng/ml以下で、それ以上高いとがん検診で陽性と判断されます。
加齢や前立腺肥大症、前立腺炎でも上昇しますが、数値が高ければ高いほど前立腺がんが発見される可能性が高くなります。
50歳になったら一度検診を受けることをすすめます。PSAが基準値以上であると診断されたら、精密検査を行います。
検査について
より詳しい検査として、PSA再検査、超音波検査、触診(直腸診)、前立腺MRIなどを行います。MRIでの前立腺がん正診率は約80%あり、診断に役立ちます。当院ではMRIは提携しているメディカルスキャニング千葉院に依頼しております。
前立腺を疑ったら、確定診断として前立腺生検が必須です。
前立腺生検は、前立腺に針を刺し、組織を採取して顕微鏡で調べる検査です。入院での検査になりますので、当院では近隣の病院へ依頼いたします。
顕微鏡で調べるのには数週間を要しますが、前立腺がんの確定ができます。
前立腺がんでないと診断された方も、PSAを継続的に採取することが大切です。
前立腺がんと診断されたら
前立腺がんと診断された方には、転移検索を行います。前立腺がんは骨、肺、リンパ節に転移することが多く、CT検査と骨シンチグラフィという画像検査を行い、転移がないか調べます。以上の検査から、病期(がんの進行具合)を判定し、治療方法を相談します。前立腺内にがんが限局している場合には、根治治療として手術または放射線、前立腺外へ進展している場合にはホルモン療法が基本になります。
症状や治療法により、他の科とも連携し治療にあたります。
治療について
限局性の前立腺がんと診断された場合は、前立腺全摘除術が行われます。現在では手術支援ロボットを用いた手術も数多く行われています。局所進行性の前立腺がんの場合は、ホルモン療法と放射線療法を組み合わせた治療が行われます。また、ごく初期の場合は、定期的な検査のみを行う監視療法も選択肢となります。
前立腺外への進展や、転移があった方にはホルモン療法を行います。これは男性ホルモンを低下させることで癌の進行を遅らせる治療です。また、化学療法も有効ですので、様々な治療を組み合わせて行います。個々人の症状によって治療法が異なります。
当院では、前立腺がんの内服治療や、手術や放射線療法後の再発フォローアップなどを各病院と連携し行います。病院での主治医と相談の上、紹介状をご持参ください。
腎がん
腎がん(腎臓がん、腎細胞がん)は、腎実質に発生する悪性腫瘍です。どちらかというと男性に多く、高齢になるほどリスクが高まります。
腎がんの初期症状はほとんどないため、健診で偶発的に発見されることが多いです。
進行に伴い、発熱、体重減少、疲労感、貧血などに加え、肉眼的血尿や背部痛、腹部のしこりなども見られるようになります。
腎がんのリスクとして、加齢、肥満、喫煙、高血圧、遺伝性疾患、および透析治療を受けていることなどが挙げられます。
検査について
腎がんの診断には、採血や検尿に加え、腹部超音波検査、造影CT、MRIなどの画像検査を行います。
治療について
腎がんの治療の基本は、外科的切除です。遠隔転移がない場合、手術による腫瘍の摘出が行われます。小さい腎がんでは、腎臓を温存する腎部分切除術を行います。部分切除が難しい場合は根治的腎摘除術を行います。遠隔転移があったり、手術での摘出が難しい場合は、薬物療法として免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などが用いられます。
なるべく早期に発見することが望ましいため、健診を受けることをおすすめします。
尿路上皮がん
尿路上皮がんとは、尿路である腎盂~尿管~膀胱を包んでいる尿路上皮(移行上皮)に発生する悪性腫瘍です。尿路で悪性腫瘍から出血すると、血尿が出現します。尿路上皮がんは血尿で発見されることが最も多いです。
年齢とともに発生率は上昇します。喫煙がはっきりとリスクだとわかっている癌で、他にも特定の化学物質に暴露する時間が長いと発症率があがります。
腎盂尿管がん
腎盂尿管がんとは
尿路上皮がんの一種です。初期症状は自覚できないことが多く、血尿が見られることがあります。がんが進行すると、水腎症が発症し、背中や腰の痛みが現れることがあります。血尿を認めた場合は、早めに受診してください。
検査について
尿管がんを疑う場合は、尿細胞診(尿に癌細胞が混ざっていないかを顕微鏡で確認する検査)や、腹部超音波検査や造影CT検査などを行います。
治療について
尿管がんの進行度に応じて治療方法が異なります。転移がない場合は手術を行います。手術は腎~尿管まで切除する、腎尿管全摘術を行います。手術での根治が難しい場合は、免疫チェックポイント阻害薬や、化学療法を行います。
膀胱がん
膀胱がんとは
膀胱がんは、尿路上皮がんの約半数を占めるとされています。特に60~70代の男性に多く見られます。男性は女性の約4倍の発生リスクがあります。
喫煙、膀胱結石や神経因性膀胱などの慢性的な膀胱の炎症で膀胱がんが発生することもあります。
症状・検査について
初期症状は乏しいことが多いですが、血尿をはじめとして頻尿や排尿痛、尿混濁などの膀胱刺激症状が見られることがあります。進行すると、排尿困難になることもあります。
膀胱がんを疑う場合は、尿細胞診や腹部超音波検査、膀胱鏡検査などを行います。
治療について
膀胱がんの進行度に応じて治療方法が異なります。原則的にまず経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)を行います。膀胱の筋層に達していない筋層非浸潤性がんで、完全に切除できればその後は再発がないかを経過観察します。上皮内がんの場合、BCG膀胱内注入療法を行うこともあります。膀胱の筋層に達している筋層浸潤性がんの場合、膀胱全摘除術+尿路変更術が行われます。進行がんの場合は、免疫チェックポイント阻害薬や化学療法を行います。
精巣がん
精巣がんとは
精巣に発生する精巣腫瘍の一種です。精巣内にしこりを感じた場合、腫瘍である可能性があるため、受診をおすすめします。精巣腫瘍は20~30歳代と50歳代で発症しやすく、発生率は10万人に1~2人程度とされています。
精巣腫瘍は一般的にほとんど痛みがなく、精巣が大きくなっていたり硬くなっていることで初めて気づく方が多い腫瘍です。
検査について
精巣がんを疑う場合、触診が重要です。また、腹部超音波検査や採血で腫瘍マーカーを測定します。また必要であればCTやMRIなどの画像検査も行います。
治療について
精巣がんを疑えば、高位精巣摘除術という手術で精巣を摘出します。摘出しないと診断を確定できないため、治療と確定診断を兼ねた手術となっています。
病理診断の結果、精巣がんであった場合には、組織診断によって治療方針が変わります。
精巣がんの大部分は悪性の胚細胞腫瘍で、セミノーマと非セミノーマに分類されます。セミノーマの場合は経過観察、放射線療法や化学療法などが選択されます。非セミノーマの場合は経過観察、化学療法または後腹膜リンパ節郭清などの治療が行われます。精巣がんの治療は腫瘍の種類や進行度によって大きく異なり複雑なため、よく主治医と治療方針を相談する必要があります。