泌尿器科とは

泌尿器科にどのようなイメージをお持ちでしょうか。
泌尿器科は「泌尿器」を診る科です。主に尿路と男性器を専門としています。
尿路とは、腎臓~腎盂~尿管~膀胱~(前立腺)~尿道までの、尿をつくり排出するまでの通り道をさします。男性にも女性にも尿路はありますので、共に泌尿器科で診察します。
尿路では、悪性腫瘍をはじめ、感染症や結石など、色々なことがおこります。
癌の場合は手術も行い、抗がん剤の投与を行います。尿路にかかわる治療は基本的にすべて行いますので、泌尿器科医は尿路を診る内科医でもあり外科医でもあるのです。

泌尿器科は受診しにくい印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、これから泌尿器科を受診すべき方は増加していきます。
2018年には前立腺がんが男性の癌罹患数1位になりました。また、年齢を重ねると排尿の症状を持つ方は増えます。これからも日本の高齢化は進みますので、泌尿器科医が果たせる役割は大きくなるでしょう。
排尿に困っていたとしても、自分が我慢すればいいやと諦める方も多いですが、勿体ないと感じます。
一度泌尿器科を受診してみてほしいと思います。その症状、改善するかもしれません。

泌尿器科の症状・疾患

人間の60~70%は水分ですが、体内で余った水分を排出し調整し、老廃物を排出するのが尿の役割です。様々な原因により、下記のような症状がおこります。

  • 尿が近い、回数が多い
  • 尿に勢いが無い
  • 尿に血が混じる
  • 尿が出にくい、出ない(排尿困難)
  • 夜間、何度も排尿に起きる
  • 尿が残っている感じがする(残尿感)
  • 急に排尿がしたくなって、トイレに駆け込む(尿意切迫感)
  • 尿が漏れる(尿失禁)
  • 尿をするときに痛む
  • 尿に濁りがある
  • 腰や背中が痛む

また、はっきりとした自覚症状がない方もいらっしゃいます。

  • (健診などで)尿潜血やたんぱく尿を指摘された
  • 尿路に結石を指摘された
  • 尿のにおいを指摘された

泌尿器科に多い症状

尿の勢いがない

尿勢低下ともいわれます。男女ともにおこりますが、前立腺肥大症に伴う男性の尿勢低下の頻度が高いです。前立腺肥大症を放置すると、尿が全く出せなくなる尿閉のリスク、出口の圧力が上がることでの膀胱機能の低下リスクがあります。
また、前立腺癌や、神経因性膀胱でも尿勢低下します。

急に排尿がしたくなって、トイレに駆け込む

誘因なく急に尿意を催し、我慢ができない状態です。尿意切迫感といいます。そのまま漏れてしまうと切迫性尿失禁になります。次項で説明いたします。

血尿

血尿とは、尿中に赤血球が混ざっている状態を指します。 血尿は、肉眼的血尿と、顕微鏡的血尿(尿潜血)にわかれます。
肉眼的血尿は目で見て血液が混ざっていることがわかる状態で尿1Lに1ml以上の血液が混入しているとされます。
顕微鏡的血尿(尿潜血)は、肉眼では確認できないものの、尿を顕微鏡で調べた際に赤血球がわずかに混入している尿をさします。健診で指摘されることも多いです。

血尿は、尿路のどこかから出血していることを示しますが、本来尿に血液は混入しないので、出血している原因が大切です。特に治療の必要がないことや、一過性で治ることもあります。原因不明である特発性、激しい運動や月経による血液の混入、遊走腎、ナットクラッカー症候群によるものなどです。しかし、尿路にはっきりとした原因があること(悪性腫瘍、結石、感染症など)や、腎臓の疾患(糸球体疾患、腎炎など)も考えられるため、一度受診した方がよいでしょう。
受診時には、尿検査や超音波検査、必要に応じてCT検査などを行います。

タンパク尿(蛋白尿)

蛋白尿とは、尿中に通常よりも多くの蛋白質が含まれている状態です。もともと腎臓は尿をつくる際に蛋白質を通さないように濾過しています。しかし、その濾過機能が低下すると、蛋白質が通過し尿中に混ざります。
尿にはもともとわずかな蛋白質が含まれていますが、1日に尿中から排泄される蛋白質が150mg以上の場合に蛋白尿と診断されます。
自覚症状がないことも多く、健診ではじめて指摘されることも多いです。
蛋白尿は激しい運動、風邪による発熱、ストレスなどで一過性にみられることもありますが、なんらかの腎疾患が原因となっている可能性もあります。腎炎、慢性腎臓病、ネフローゼ症候群、高血圧や糖尿病で腎機能が低下して場合には専門は腎臓内科になります。また、尿路に結石、腫瘍、炎症があり腎機能が低下していることや、その他の原因で蛋白尿になることもあります。

泌尿器科で多い疾患

悪性腫瘍

尿路にできる悪性腫瘍です。腎癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌などがあります。
泌尿器がん

尿路結石

尿路にできる結石です。尿路のどこに結石が存在するかで、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石にわかれます。 結石が発生するメカニズムは完全には解明されていませんが、なんらかの原因で尿路に結石ができます。部位によって治療が異なります。腎臓の実質内にある結石は痛みなどの症状がないことが多いですが、尿路に存在する結石は、痛みや血尿を伴うことがあります。排出のためには水分摂取が重要です。
特に尿管で閉塞した結石は、水腎症を引き起こし危険です。緊急処置が必要になることもありますので、早急な受診をお勧めいたします。
結石を排出しても、5年以内の再発率が5割になるとの報告もあり、再発を予防することが大切です。

尿路感染症

尿路におこる感染症です。腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、精巣上体炎などがあります。
尿路感染症は、逆行性感染がほとんどです。逆行性感染とは、尿道から入り込んだ細菌などが、尿の流れに逆らってあらゆる臓器に到達する感染経路です。膀胱炎は発熱することは稀ですが、腎盂腎炎や前立腺炎は高熱を伴います。
排尿痛や頻尿といった排尿症状と発熱がある場合、尿路感染症の可能性があり、放置すると敗血症になる可能性がありますので、泌尿器科を受診してください。

排尿障害

頻尿や残尿感、夜間頻尿、尿勢低下、尿失禁など、排尿症状がある場合すべて排尿障害となります。原因としては前立腺肥大症、過活動膀胱、神経因性膀胱などがありますので、別項にて説明いたします。

神経因性膀胱

神経因性膀胱は、その名の通り神経が原因でおこる膀胱の状態をさします。
膀胱の機能は尿を貯めることと、収縮して尿を排出することです。脳や神経系の障害で膀胱の収縮や弛緩を制御する神経が適切に働かず、膀胱機能が損なわれ排尿がうまくできなくなり、膀胱容量が異常に広がったり、逆に容量が極端に減少したりします。
障害の起きている部位により症状が異なります。脳血管障害や認知症、パーキンソン病などにより大脳に障害がある場合、事故や外傷、腫瘍によって背髄に障害がある場合、糖尿病などにより末梢神経に障害がある場合、それぞれによって多岐にわたる症状があり、完全に障害がある場合と不完全に障害がある場合でも症状が変わり、複雑に絡み合っています。
頻尿や残尿感、排尿困難感、尿意切迫感などの排尿障害に加え、病状の進行に伴い尿意が低下したり消失したりすることもあり、尿失禁や尿閉が起こります。
治療法は原因を取り除くのが一番ですが困難なことも多く、内服薬や骨盤底筋体操、生活指導などで対症療法を行います。自然な排尿が難しくなれば、排尿管理を導入します。
間欠的自己導尿やナイトバルンカテーテルを適切なタイミングで導入することも大切です。