女性の泌尿器のイメージ写真

女性に起きやすい泌尿器疾患があります。
女性は身体の構造に男性と違いがあります。一例では尿道の長さが、男性が15~20cm程度あるのに対し、女性は3~4cm程度と短いので、逆行性感染がおこりやすくなり、膀胱炎に罹患しやすくなります。
また男性と比べ骨盤が広く、骨盤内臓器を骨盤底筋群で広く支えています。骨盤底筋群は、尿道周囲の尿道括約筋に連続しており、尿道をしっかり閉じることで尿漏れを防ぐという働きがあります。加齢や出産で骨盤底筋群が薄くなると、腹圧性尿失禁や臓器脱が起こりやすくなります。

女性の方に多い症状

  • 尿が近い、回数が多い
  • 夜間、何度も排尿に起きる
  • 急に排尿がしたくなって、トイレに駆け込む(尿意切迫感)
  • 尿が漏れる(尿失禁)
  • 尿をするときに痛む
  • 尿に濁りがある
  • 腟の外に丸いものがよく脱出する
  • 足がむくんでいる
  • 腰や背中が痛む など

女性泌尿器科でよくみられる疾患

膀胱炎

膀胱炎は尿路感染症の一種で、膀胱で起こる炎症です。炎症の進行速度で急性か慢性、基礎疾患の有無で単純性と複雑性にわけられます。最も一般的な急性単純性膀胱炎について説明します。
急性単純性膀胱炎は大腸菌や肺炎桿菌、プロテウスなどのグラム陰性桿菌が原因となることが多く、女性に起こりやすい尿路感染症です。これは女性の尿道が短いためや性行為によって細菌が尿道に入りやすいからですが、ストレス、疲労も原因となりえます。
主な症状は頻尿、排尿痛、膿などが混じり濁った尿(尿混濁)があります。
診断は尿検査にて尿中の白血球数や細菌の有無を調べます。水分摂取が治療にも予防にもなりますので普段から心がけましょう。

過活動膀胱

40歳以上の人々の約8人に1人が過活動膀胱の症状を抱えていると言われています。女性の方が男性よりやや多く、高齢になるにつれ増加傾向にあります。
男性は前立腺肥大症と合併することが多いですが、女性は単独でも過活動膀胱になることが多く、お悩みの方が非常に多い疾患です。生活の質(QOL)に影響するため泌尿器科への受診をおすすめします。
過活動膀胱に特徴的な症状として、尿意切迫感があります。誘因なく急に尿意を催し、我慢ができない状態です。そのまま漏れてしまうと切迫性尿失禁になります。そのほか、頻尿や残尿感も起こります。
過活動膀胱は、脳血管障害やパーキンソン病などが原因で神経因性の過活動膀胱も起こりますが、圧倒的に多数の人が起こるのが非神経因性の過活動膀胱です。
原因ははっきりしておりませんが、加齢、ストレス、膀胱内の尿意センサーが過敏になることなどが原因とされます。治療には、膀胱の過剰な収縮を抑える薬や膀胱容量を広げる薬の服用、生活指導として膀胱訓練などを行います。

腹圧性尿失禁

腹圧性尿失禁は、咳やくしゃみ、笑った時など、腹部に力が加わった際に起こる尿失禁です。骨盤底筋群という膀胱と尿道を支える筋肉が働いて尿道を締める役割を果たします。骨盤底筋群の筋力低下や損傷すると、腹圧がかかった際に耐え切れず尿漏れが起こります。腹圧性尿失禁は女性に多くみられます。
というのも女性は骨盤が広く骨盤底筋群が臓器を支える役割が大きく、加齢や出産、体重増加など様々な原因で骨盤底筋群が弱くなると腹圧性尿失禁が起こりやすくなります。40歳以上の女性の4割以上が腹圧性尿失禁を経験しているとも言われています。また、約3割の患者さんは切迫性尿失禁も併発します。骨盤底筋体操という骨盤底筋を鍛える体操や、内服薬などを用いて治療します。

骨盤臓器脱

骨盤臓器脱とは、膀胱、子宮、直腸などの骨盤内臓器が骨盤外へ脱出する疾患です。脱出している臓器に応じて、子宮脱、膀胱脱(瘤)、直腸脱など名称がかわります。
これにより、股の間に何かが挟まったような感覚や、頻尿や尿失禁などの排尿症状や、出血や便秘などの症状が起こります。

骨盤臓器脱の主な原因は、前述の骨盤底筋群の緩みです。また腹圧がかかりやすいとされる動作や、肥満などもリスク要因です。これらの要因によって、膀胱、子宮が下がり、いずれ膣壁ごと体外へ脱出することがあります。

治療法としては、軽度の場合は骨盤底筋体操や、ペッサリーを用いて一時的に下垂部分を押し上げます。重度の場合は、手術によって下垂した場所を吊り上げる方法があります。

間質性膀胱炎

「膀胱炎」という名前がついておりますが、感染症ではありません。原因は明らかになっていませんが、何らかの原因で膀胱に炎症が起こり、それによって強い痛みがありかなりの苦痛を伴います。特に膀胱に尿が貯まったときに痛みが出現する蓄尿痛や排尿痛を起こすことが多く、歩くのすら苦痛となる方もいます。また、頻尿や尿意切迫感などの排尿症状を伴うこともあります。重症の方は難病指定される可能性もあります。
そもそも診断が難しい疾患であり、診断するには、除外診断という他に器質的な疾患がない場合にはじめて間質性膀胱炎の診断を行えます。
治療には生活習慣の改善をはじめ、鎮痛剤や抗アレルギー薬に加え、膀胱内に注入する薬剤を使用したり、膀胱水圧拡張術という膀胱に生理食塩水を注入して水圧で膀胱を拡げる手術を行ったりします。
残念ながら治癒が難しい病気で、症状がいったん改善しても半年程度で再燃する方が多く、定期的な通院が必要です。 排尿するのに強い苦痛があるのに、周りの方に理解を得られず悩んでいる方は、間質性膀胱炎の可能性がありますので、どうぞご受診ください。